インビザラインって、虫歯の治療中や銀歯が入っていてもできるの?
インビザラインは、マウスピース矯正の代名詞ともいえるシステムで、アメリカのアライン・テクノロジー社が開発・提供しています。日本でも広く普及しているため、皆さんもよくご存知のことでしょう。装置が目立たず、食事や歯磨きを普段通りに行える次世代型の歯列矯正ともいえるインビザラインは、従来法であるワイヤー矯正にはないメリットもたくさんあります。
それだけにインビザラインを万能とも捉えている人は多いのですが、適応についてはどうなのでしょうか。虫歯の治療中や銀歯が入っていてもインビザラインなら矯正を始められるのか、気になりますよね。今回はそんなインビザラインの適応症や治療を進めていく上での注意点などをさいたま市北区土呂町のイクティス歯科クリニックがわかりやすく解説をします。
インビザラインは虫歯があっても適応できる?
虫歯を放置するという選択肢はない
はじめに、虫歯と歯列矯正の関係についてご説明します。虫歯はミュータンス菌に代表される虫歯菌が歯に感染し、エナメル質や象牙質を溶かしていく病気で、自然に治ることはありません。ですから、インビザラインの矯正前や矯正中に虫歯ができると、徐々に進行していくため、必ず歯科医院での虫歯治療を受けなければなりません。虫歯治療を受けずに放置していると、感染の範囲が広がるだけでなく、歯の形が変わったり、時には歯を抜かざるを得なくなったりするため、何もしないという選択肢はないものとお考えください。
虫歯治療中ではインビザラインを始められない
次に、虫歯治療を受けている状態でインビザラインを始められるかどうかについてですが、これは原則としてNGです。上述したように、虫歯治療を行った後には歯の形などが変化することもあります。その状態でインビザラインのための検査をしたり、マウスピースを作ってしまったりしたら、適切な診断を下すことも治療を進めていくことも難しくなります。
そもそも虫歯がある状態、もしくは根管治療などを行っている状態でインビザラインのマウスピースを装着することは、矯正上さまざまな問題を伴うため、GOサインを出す歯科医師はいません。そういう意味で、虫歯治療中にインビザラインを始めることはないといえません。
もちろん、虫歯の進行度が浅く、1~2回の処置で修復まで行えるケースなら、カウンセリングや検査などを進めていく中で虫歯治療も完了するため、インビザライン矯正にはそれほど大きな影響は出ません。ですから、虫歯治療の内容によっては、とりあえずやれることから進めていきましょう、というスタンスでインビザラインの診療を始める歯科医師もいるかもしれません。そこは歯科医師の判断に任せることになります。
インビザライン矯正中に虫歯になった場合は?
インビザライン矯正を始めてから虫歯を発症した場合もどうなるのか気になることでしょう。実際、インビザライン矯正中に虫歯になる人もいらっしゃいます。そうしたケースでは基本的に虫歯治療を優先することになります。比較的軽度の虫歯であれば、感染した歯質を削り、コンポジットを充填するだけで完治が見込めるため、インビザライン矯正に大きな支障をきたすことはないでしょう。
仮に歯の神経まで虫歯が進行し、歯冠もボロボロになるような虫歯を発症した場合は、インビザライン矯正を中断するだけでなく、もうすでに出来上がっているマウスピースを作り直す必要性も出てきますが、そうしたケースは稀といえます。なぜならインビザライン矯正でも2ヵ月に1回は矯正を受診するため、そこまで虫歯が重症化することはあり得ないからです。
銀歯が入っていてもインビザラインはできる?
続いては、銀歯が入っている場合のインビザライン矯正についてです。ひと言で銀歯といっても詰め物や被せ物、ブリッジなど装置の形態はさまざまで、その種類によってはインビザラインでの対応が変わる場合もありますのでご注意ください。
◎金属製の詰め物・被せ物が入っている場合
いわゆるメタルインレーやメタルクラウンが入っているケースでは、問題なくインビザラインできることがほとんどです。インビザラインは、マウスピース型の装置を歯列の上から装着する治療法なので、金属製の詰め物や被せ物が入っていても支障をきたすことはありません。
◎金属製のブリッジが入っている場合
失った歯の治療法であるブリッジは、人工歯が少なくとも3つ連結している装置です。それをインビザライン矯正によって適切に動かすことは難しいため、事前に何らかの処置を施す必要があります。ちなみに、ブリッジがセラミックやレジンで作られていたとしても、同様の処置が必要となります。
インプラント(人工歯根)が入っているとどうなる?
インビザライン矯正では、口腔内にインプラントが存在する場合、その治療の可否やアプローチには特別な配慮が必要です。
インビザライン矯正とインプラントの相性
まず、インプラントとは、失われた歯を補うために、顎骨に埋め込む人工の歯根です。インプラントは一度顎骨に統合されると、その位置を変えることはできません。このため、インビザライン矯正を検討する際には、インプラントの存在が特別な配慮を要するポイントとなります。
インビザライン矯正が可能な場合
インプラントがある場合でも、インビザライン矯正は原則として可能です。ただし、以下のような処置や配慮が必要となります。
周囲の歯の矯正: インビザラインはインプラント自体を動かすことはできませんが、インプラント周囲の自然歯を動かして、全体としての歯並びや噛み合わせを改善するアプローチが取れます。このプロセスでは、インプラントを支点として使用することも可能です。
矯正前の詳細な計画: 歯科医師は、3Dイメージング技術を使用して、口腔内全体の詳細なスキャンを行い、インプラントの位置や周囲の歯並びを正確に評価します。これにより、矯正計画を慎重に立てることができます。
アタッチメントの使用: インビザライン矯正では、特定の歯にアタッチメント(小さな樹脂製の突起物)を取り付けることがあります。これにより、アライナーのグリップを強化し、効率的な歯の動きをサポートします。インプラントがある場合、周囲の歯に適切にアタッチメントを配置することで、矯正の効果を最大化します。
インビザライン矯正が難しい場合
一方で、インプラント周囲の骨量が不足しているなど、特定の状況下ではインビザライン矯正が推奨されない場合があります。また、インプラント周囲の歯に大幅な移動が必要な場合や、インプラントが治療計画に合わない位置にある場合は、他の矯正方法を検討する必要があります。
経験豊富な歯科医師を見つけることが大切
インプラントが存在する状況でも、インビザライン矯正は可能ですが、特別な配慮と計画が必要となります。治療の可能性と限界を正確に理解し、経験豊富な歯科医師と密に連携することが、成功への鍵です。インビザライン矯正により、インプラントを含む全体の歯並びや噛み合わせの改善を目指し、患者さんにとって最適な治療結果を実現することが可能です。
まとめ
今回は、虫歯の治療中や銀歯が入っている場合にインビザライン矯正を受けられるのかどうかについて、さいたま市北区土呂町のイクティス歯科クリニックが解説しました。本文でも述べたように、インビザライン矯正を始める前の段階で虫歯があったり、虫歯治療中であったりする場合は、先にお口の中を健全な状態にする必要があります。それはインビザライン矯正中に虫歯になった場合も同じです。
一方、銀歯やセラミック歯などの被せ物が入っている場合は、基本的にそのままインビザラインを始められることが多いです。歯冠の部分にどのような装置が入っていたとしても、歯根は健全な状態であるため、インビザライン矯正で大きな支障をきたすことはほとんどないからです。その他、インビザライン矯正の適応に関して疑問や不安に感じることがありましたら、いつでもお気軽に当院までご相談ください。